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2021/03/04(木) - 2021/03/28(日)

田代一倫写真展「2011-2020 三陸、福島/東京」

終了しました
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シリーズ「はまゆりの頃に」より

このたび2021年3月4日(木)から3月28日(日)まで田代一倫写真展「2011-2020 三陸、福島/東京」をコミュニケーションギャラリーふげん社にて開催いたします。

田代一倫は、1980年福岡県北九州市八幡生まれの写真家です。九州産業大学大学院芸術研究科写真専攻終了。2006年から福岡市で〈アジア・フォトグラファーズ・ギャラリー〉の設立と運営に携わり、2009年から新宿「photographers’ gallery」に参加し、2010年に上京。現在は東京を拠点に活動しています。

本展では、田代一倫の2つの肖像写真シリーズを展示いたします。一つは、東日本大震災後の2011年春から2013年春にかけて被災地とその周辺を撮影し写真集にまとめた「はまゆりの頃に」のシリーズ。二つ目は、2014年から2020年の東京オリンピック開会式予定日の前日まで撮影された「「東京」2014-2020」のシリーズです。

田代の肖像写真は、被写体となる人物に声をかけて、カメラを真っ直ぐに見つめてもらう方法で撮影されます。全身を画角の中央に入れつつ、さらにその人が立つ場所の光景までを背後に収めて撮影されているのが特徴です。

「はまゆりの頃に」で、田代は、震災の一ヶ月後から約二年間で1200人にのぼる人々を撮影しました。被災地に赴くきっかけを「インタビューに答えていない人の方の生活が気になったから」と作家が語る通り、肖像写真と添えられた短いコメントからは、メディアに「被災者」として切り取られる前の人々の日常を垣間見ることができます。外からやってきた「異物」であり「よそ者」である田代が撮影する時に生まれる人々との交流は、あらゆる境界線をゆるめ両者の間に柔らかい風をもたらします。

一方で、2014年ごろから、生活のために始めた警備のアルバイトの同僚を撮り始めたことをきっかけに、東京の肖像写真シリーズが始まります。都内の人々の歩行に「生活」のための計算された無駄の無さを感じて馴染めなかったという田代は、撮影行為の一瞬だけは、撮影者と被写体がそれぞれの「生活」を中断し、他者を認識して「見る/見られる」の関係になり、両者の関係は等しくなるのではないか、と言います。また、そうして人に見返されることに喜びを感じていたとも語っています。

コロナウィルス後の世界では、街中でマスクに覆われていない他者の顔を見つめる・見つめられる経験はほぼ無くなってしまいました。田代一倫の肖像写真は、今、新たな意味合いを帯びてきています。

東日本大震災から10年目、そしてウィズコロナ2年目を迎えようとする2021年3月に、肖像写真に映るさまざまな人々の「生活」に思いを馳せていただければと思います。また、同時に、多くの肖像に見つめ返されながら、自分自身も一度立ち止まって、自らの「生活」を見つめ直す契機となりましたら幸いです。

作家ステートメント

私は、2011年の春から2013年の春まで、東日本大震災の被災地を含む、東北の太平洋側で人に声をかけて撮影した。そして、人物写真とその人の発した言葉や私が感じたことを覚え書きとして連ねる「はまゆりの頃に」というシリーズを発表し、最終的には写真集にまとめた。今回の展示では、そのシリーズを発表する。一年の中の多くを東北で過ごし、1200人以上撮影してきたことを中断した大きな理由は、経済的に身動きが取れなくなったことと、体力がなくなったからだ。

2014年からは、主に自分が住んでいた東京で撮影をしていた。出来る範囲で撮影するために始めたものであるが、幸いにも幾人かの方に具体的な発表媒体をいただき、「仕事」だと自分に思いこませて東京を撮り続けることもできた。「復興五輪」に向かい、少しずつ変化していく東京を撮っていると、やはり「中央」を肯定している違和感があり、離れてしまった東北に思いを巡らせることも多かった。被災地の現在を伝える番組を見ると「なぜ自分はそこで撮影していないんだろう?」と思ってしまい、しばらくはきちんと見れなかった。

思い返すと、震災直後に津波の被害が大きかった岩手県の大槌町を訪れた時、私は、車窓を見ながら、「この眺めと匂いは一生忘れない」と誓っていたのだが、いくら思いを巡らせてみても、その光景ははっきりとした像にはならないし、匂いに関しては全く覚えていなかった。自分が使う「一生」とか「忘れない」という言葉は、どれだけ信用できないかを感じていた。

だから、私は、毎年3月11日を複雑な気分で迎えている。東北での記憶の感触が薄れている私が何を思えば良いのか。今回の展示で、「節目の日だから思い出す」ということは言いたくはない。ただ、この十年を振り返っただけでも、東京と東北はいびつな表裏を回転させ、時間を経過しているようにも思う。忘れる、忘れないではなく、ずっと「続いている」ということなら、感じてもらえるかもしれない。そのようなことを東京の「ふげん社」という場所で、立ち止まって考えていただきたく、「「東京」2014-2020」というシリーズも同時に発表する。

田代一倫

はまゆりの頃に

2011年4月23日 岩手県宮古市田老田中 「震災を思い出すので、直後はなかなか自分の家に戻ることができなかった」 自宅跡に探し物をしにきた女性です。高価な物ではなくても、自分にとって大切な物を探す方々と対面すると、物に対する人の価値観を改めて考え直します。

2012年7月24日 岩手県大船渡市赤崎町蛸ノ浦 「オレンジ色がはまゆり、白がやまゆり。あれ?逆か?」 家で鉢植えにするために、花を抜いて来たという男性です。海辺の崖に咲くはまゆりと、山に咲くと言われているやまゆり。両方を一気に持って帰れることを、私は羨ましく思いました。

「東京」2014-2020

全ての写真 ©︎Kazutomo Tashiro

■開催概要

田代一倫写真展「2011-2020 三陸、福島/東京」

2021年3月4日(木)〜3月28日(日)

火〜金 12:00〜19:00

土・日 12:00〜18:00

休廊:月曜日(20日(祝・土)もオープンします)

会場:コミュニケーションギャラリーふげん社

〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12

TEL:03-6264-3665

展示内容:

「はまゆりの頃に」 発色現像方式印画+インクジェット・プリント 約55点

「「東京」2014-2020」 発色現像方式印画 約24点、シングルチャンネル・ヴィデオ 約13分

 

■作家プロフィール

田代一倫(たしろ かずとも)

1980年福岡県生まれ。九州産業大学卒業。2006年より、福岡市にて、写真家自身で運営するギャラリー〈アジア フォトグラファーズ ギャラリー〉の設立、運営に参加。2009年より〈photographers’ gallery〉の運営に参加。2013年に写真集『はまゆりの頃に 三陸、福島 2011~2013年』(里山社)、2017年に写真集『ウルルンド』(KULA)を出版。さがみはら写真新人奨励賞を受賞。

個展に「2011-2020 三陸、福島/東京/新潟」(砂丘館/新潟、2020年)など。2014年「これからの写真」(愛知県美術館)、2016年「歴史する! Doing history!」(福岡市美術館)、2017年「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」(東京都写真美術館)、2018年「近くへの遠回り」(ウィフレッド・ラム現代芸術センター、キューバ)に出品。

 

■イベント

3月13日(土)14:00〜

ギャラリートーク 田代一倫 × 金川晋吾(写真家)

参加費 1000円(要予約)

※ご予約は電話とメールで承っております。

TEL:03-6264-3665 Mail:event@fugensha.jp

※同時オンライン・ライブ配信(有料)

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ゲスト プロフィール:

金川晋吾

1981年京都府生まれ。写真家。神戸大学卒業。東京藝術大学大学院博士後期課程修了。三木淳賞、さがみはら写真新人奨励賞受賞。2016年青幻舎より「father」刊行。近年の主な展覧会、2019年「同じ別の生き物」アンスティチュ・フランセ、2018年「長い間」横浜市民ギャラリーあざみ野、など。自分が書いた日記を声に出して読む「日記を読む会」を不定期で開催している。

http://kanagawashingo.com/