私の国 第6章 Beatrix Fife “Bix” THE LAND (日本語) 2020.04.21 眠りに落ちる直前に私が描いたその紙を改めて見直してみると、自分が描いたものとはまったく違うように見える。それでも、同じものなのだ。違って見えるのは、私のせいなのだろうか? テーブルから絵を床に降ろして、何が変わったのだろうかと考える。私の目だろうか? 私の内側に何か一瞬の間が生じて、それがゆっくりと、ごく小さな内なる興奮へと変わっていく。それがまた奇妙なことに、私の気分をいくらか良くしてくれるのだ。 かがんで、そのスケッチを拾い上げる。誇りとでも言うような甘い感覚が湧き始める。これを描いたのは私なのだ、と。 鉛筆で描いた水平線はとても細く、それが画面を二つに分けている。私の心のなかに映った水平線の上の空間に、淡い水色が広がり始める。たぶんそこにはいくらか雲も浮かんでいるのだろう。そして水平線の下の別の色調のなかにはたぶん波もあって、そしてその線の上のずっと遠くには、おそらくは陸地が……。 水平線の上にも下にもどちらにも小さな線が何本もあるが、その線は真っ直ぐではなく、カーブを描いた短いものだ。その画面はまた、語られる言葉と言葉の間の沈黙を、そして路面電車が通ったあとの雪道の静寂を思い起こさせる。鉛筆のわずかな痕跡を見ていると、ピアノで私が弾くメロディの一節がいくつも聞こえてくるようだ。 自分の手をながめる。突如として、私は何か新しいものごとを、以前とは違うものを想像することができるようになる。私の目は、ついにこの手を感情と結びつけられるのだろうか? 絵をテーブルの上に置き直す。 そのデッサンは、また変わってしまったように見える。変わったのは、私自身の知覚だということは明らかだ。 私の身体の内側で、何かが動いているような感じがする。ちっぽけな、小さな動き。 これが何なのかを、もっと知らなければならない。 《井戸》アクリル・紙 14×18cm