2024/05/31(金) - 2024/06/23(日) 大塚勉個展「TRANS-BODY」 終了しました Exhibition English is here. 「TRANS-BODY」©️ Tsutomu Otsuka このたび、コミュニケーションギャラリーふげん社にて、2024年5月31日(金)から6月23日(日)まで、大塚勉個展「TRANS-BODY」を開催します。ふげん社から刊行される同名の写真集の刊行記念展です。 大塚勉は、1951年、千葉県浦安市の漁師の息子として生まれました。1971年に東京工芸大学を卒業。豊かな遠浅の海であった浦安の埋め立て工事が急速に進んだ頃、埋立地が大塚にとっての創作の場となり、1969〜1972年に8ミリカメラで何本かの実験映画を制作しました。1971年からは埋立地の景色の撮影も始めています。 本展では、「沼現像」と呼ばれる独自の手法で制作された、大塚の代表作である3つのシリーズ「根茎」「地の刻」「TRANS-BODY」を集成した新刊写真集『TRANS-BODY』の収録作品から、約40点を展示いたします。 1991年から1998年ごろに制作された本シリーズは、印画紙を漂白したのち、沼に1週間沈める「沼現像」によって制作されました。沼という「自然の暗室」によって、印画紙が茶色や青色の独特の色合いに染まり、時に沈澱した落ち葉の模様が残ったり、銀が浮いてきたりして、唯一無二の物質感のあるプリントが出来上がります。 自身を含む男性と女性の身体の一部や、植物をクローズアップで撮影し、それらのネガを複数枚合成して得られたイメージは、男と女、人間と植物、生と死といった境界線を融解した原初的な生命体のように見えます。「沼現像」は、それらの命の姿を、沼という地球の羊水に回帰させる試みのようです。 また、本展では、「沼現像」作品と合わせて、大塚が2011年の東日本大震災後に福島県相馬市に訪れ、津波で流された不特定多数のアルバム写真を複写し、「銀現像」を施した作品も合わせて展示します。腐葉土と共にホットプレートで印画紙を煮沸し写真を銀化させる「銀現像」によって、100年の時間の経過を一枚のプリントに凝縮し、人々の記憶と時間が重なり合う、モノとしての写真を表現しました。 本展で発表する作品はいずれも、浦安のゼロメートル地帯で育まれた土と水の感覚、そしてそれらの原風景が清々しいまでに更地となったあとに、映画制作で自作自演のパフォーマンスをした身体的経験、そして写真というメディアに対する実験的精神が、渾然一体となって昇華したものであると言えます。大塚勉作品の極致となる展覧会、そして写真集を、ぜひご覧ください。 会期中には、旧くから大塚の写真をご覧になっており、この度出版される写真集にも寄稿していただいた、写真評論家の飯沢耕太郎さんをゲストにギャラリートークを開催します。 「根茎」©️ Tsutomu Otsuka 「地の刻」©️ Tsutomu Otsuka 「地の刻」©️ Tsutomu Otsuka 「TRANS-BODY」©️ Tsutomu Otsuka 「TRANS-BODY」©️ Tsutomu Otsuka ■開催概要 大塚勉個展「TRANS-BODY」 会期:2024年5月31日(金) 〜6月23日(日) 開館時間:火〜金 12:00〜19:00 土・日 12:00〜18:00 休廊:月曜日 会場:コミュニケーションギャラリーふげん社 〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12 TEL:03-6264-3665 MAIL:info@fugensha.jp https://fugensha.jp ■イベント 6月1日(土)14:00〜15:30 ギャラリートーク 大塚勉×飯沢耕太郎(写真評論家) ※トーク終了後にオープニング・レセプションを開催します。 詳細はこちら チケットは、オンラインストアからご購入ください。 https://fugensha-shop.stores.jp/ ※オンラインストアからのご購入が難しい場合は、ふげん社(03-6264-3665)までご連絡ください。 ※配信チケットのアーカイブ視聴可能期間は2024年7月7日(日)まで ■新刊写真集案内 大塚勉『TRANS-BODY』 寄稿:飯沢耕太郎 デザイン:宮添浩司 サイズ:A4変型(210×287mm) 仕様:スイス装・コデックス装/96頁 発行所:ふげん社(2024年5月5日) 定価:4,400円(税込) ISBN 978-4-908955-29-7 ご注文はこちら ■アーティスト・ステートメント 地、水、体の彼方へ ソファー、椅子、クッション、それらは私の撮影の為の大切な小道具たちである。 それぞれは黒布で覆われ、そこに置かれる。 そしてまずモデルが横たわり(私がそこに在る時もある)、撮影が始められる。 体はゆっくりと道具の中に沈み込み、少しずつ弛緩したポーズに移行したり、ずれ落ちそうなポーズや、不自然な体の動きをしたりする。 その時、体はバランスを保とうと、筋肉が不意に緊張感を高め、元の姿勢に戻そうとしたりする。 あるいは片足立ちを交互に何度も繰り返し、足を組みかえ、腕を上下左右に動かし、意味も無く足をバタつかせたりする。 そこでは静から動へと移動した時の皮膚と筋肉の表情に最大の関心がよせられる。 この撮影方法は毎回繰り返し続けられる。 それは女性と男性の外見的なそれぞれの体の特徴が、緊張と弛緩、あるいは筋肉の強弱といった動きの中によく現れるからである。 写された体はあくまで断片的なポーズばかりであり、それらは何がしかのメッセージも挑発的な姿勢もなく、ただそこにあるだけで十分ことがたりている。 ここに写された断片的な体の一部分はセルフポートレイトである。 しかし腕、足、胴体、尻など、体の部分はあくまで特定の個人をさすのではなく、匿名であることによって、交換可能であるように撮影される。 体の全体の中にあるそれぞれの部分を全体から切り離すことによって、浮遊し、何処にも属さない、自由さと危さの関係を獲得する。 これらの断片は繰り返し形を変えながら、印画紙上で、やがて形を整えられ再構築された体となって現れる。 そして印画紙は化学処理され沼に沈められる。 ■プロフィール 大塚勉 Tsutomu Otsuka 1951年 千葉県浦安市生まれ 1971年 東京写真大学(現・東京工芸大学)卒業 1969-72年 実験映画制作 主な個展/グループ展 1987年「IncognitoⅡ/花片の翳り」新宿ニコンサロン(東京) 1989年「IncognitoⅢ/水の種子」シブヤ西武美術画廊(東京) 1992年「地の刻」INAXギャラリー(東京) 1998年「ラヴズ・ボディ ヌード写真の近現代」東京都写真美術館(東京) 「水と空と地の間で」(フランスにおける日本年)GALERIE VRAIS REVE(リヨン・フランス) 2019年「SITE/埋立地1971ー2019生成する場」浦安市郷土博物館(浦安) 2020年「瞬く皮膚、死から発光する生」足利市立美術館(足利) 2023年「過客」ギャラリーヨクト(東京) パブリック・コレクション フランス国立図書館 浦安市郷土博物館 写大ギャラリー