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[築地の人びと] 第一回 地元で100年愛されるパン屋「築地木村家」

Fumi Sekine

2014.12.15

こんにちは、店主です。

突然ですが、今日から新連載が始まります。タイトルは「築地の人びと」。

築地で暮らす人びとやお店にスポットをあて、その人やお店にまつわるストーリーをご紹介していきます。

この連載を通して、地元の方々にとっても、築地をよく知らない方々にとっても、築地という土地が、みなさんの中でより身近なものになっていくことを願います。

これから月1を目標に、連載していく予定です。しばしお付き合いください。

記念すべき「築地の人びと」第1回は、築地駅 入船橋方面改札出口より徒歩0分(!)に位置します、「築地木村家ペストリーショップ 本店」さんにスポットを当てます。

築地木村家さんは、あんぱんの発祥店・銀座木村屋さんの暖簾分けで、明治四十三年(1910年)に開業された老舗です。

築地駅(入船橋方面出口)から、ふげん社までの道のり(聖ルカ通り沿い)にあります。

朝からお客さんが絶えない人気店です。

商品を見ていると、店員さんがきさくに話しかけてくださり、あんぱんの試食を勧めてくださいます。親しみやすい外観に惹かれてふらっと立ち寄ると、ついつい何個もパンを買ってしまう、地元に愛される老舗パン屋さんです。

11月下旬のある日、4代目窯元・内田秀司さんにたっぷり一時間、お話をお聞きすることができました。

4代目窯元・内田秀司さん

木村家さんの売れ筋メニューのお話から、現在の日本の食文化というスケールの大きなお話まで、話題が及びました。

この記事を読んでくださった方だけに、木村家さんからちょっとしたサービスもございます。よろしければ最後までお付き合いくださいませ♪

1.築地木村家名物のけしあんぱん

けしあんぱんは、銀座木村屋の元で修行した初代窯元・内田栄一氏が、暖簾分け店として築地木村家を創業した当時からの、築地木村家の名物商品です。

銀座木村屋のあんぱんには塩漬け桜がトッピングされていますが、築地木村家のあんぱんには、けしの実がトッピングされています。

 

けしあんぱん、よりどりみどり

あんぱん生地の従来の材料である酒種ではなく、ビールのホップで作る生地は、3代目内田豊二氏がご考案され、その味が現在まで受け継がれています。

明治天皇に献上された銀座木村屋の高級感ただようあんぱんと比べ、庶民的で気取らず、どこか親しみを覚えるのが、築地木村家のあんぱんなのではないでしょうか。

お店の真ん中のテーブルに所狭しと並ぶあんぱんたち

テーブルにあんぱんが所狭しと並ぶ

現在、けしあんぱん4種、栗あんぱん2種、はちみつりんごぱんの計7種が、定番のあんぱんとなっています。

それに加えて2~3ヶ月で品目が変わる季節品が、年間で15~20種発売されています。

お店のメインのテーブルに、所狭しと多種多様なあんぱんが並んでいる様は、いつみても壮観です。

なぜかパン屋に丼ものが…!?

あんぱん以外では、当代窯元がご考案された、牛すじカレーパンも大人気。

中はアツアツホクホク、外はサックサク。パン屋なのに、なぜか牛すじカレー丼もあるとか…!?

とにかく、木村家さんのパンはバラエティに富んでいます。

 

築地という土地を生かしたメニュー「まぐろステーキサンド」や、曜日限定の「ハムカツサンド」や「特製ポテサラコンビーフ」など、サンドイッチも凝っていて美味しい。

その他にも、映画『風立ちぬ』に登場して話題になったシベリアもあります。木村家さんのシベリアは、カステラ部分がふわふわで、とっても美味しいですよ。

シベリアやデビルスドーナツも人気

2.お店の建物の外観について

築地木村家さんの魅力の一つは、なんといってもお店のレトロな風貌です。

 

パンを買った観光客は、必ずお店の外観の写真を撮っていかれるとか。

建物は、創業から何度か建て替えをおこなっていて、現在の建物は、関東大震災後に建てられたもの。

三代目の弟さんにあたり、武蔵野美術大学のご出身で、図鑑の挿絵などを担当するイラストレーターだった内田慶三氏が、お店のデザインをされたそうです。

新しいビルの間に挟まれたレトロな建物

内田さんのご一家は、芸術文化にご興味のある方が多かったようで、三代目の豊二氏も絵を描くのがお好きで、現在も店内には豊二氏の絵が飾られています。(イートインスペースでご覧になれます。)

豊二氏は本好きでもあり、料理本を中心とした蔵書や古地図が、店内の書斎に大量にあったそうです。

余談ですが、内田さんご一家は早稲田大学出身の方が多いそうで、早稲田大学在学中の店主は、一気に親近感がわいたのでした。

閑話休題。外観もさることながら、木村家さんは店内も、独特な空気感を放っています。

その雰囲気を形作っているのが、四代目・秀司さん自ら書かれているという、怒涛のポップ攻撃です。

筆者のお気に入りは「インド人はボケ知らず。毎日木村家でカレーを食べよう。」。

木村家でお昼ご飯を350円で収めて節約生活を送ろう!というポップも好きです。

油性マジックペンの男らしい筆致によって書かれる、商魂溢れる情熱的なコメントが、強烈な個性を放っています。

この一つ一つのポップをご覧になるのも、ご来店の際の楽しみの一つとしてみてはいかがでしょうか。

3.オリジナルマップについて

木村家さんは、ご来店されたお客様に、オリジナル観光マップを配布されています。

そのマップには、木村家さん周辺の観光地や、築地市場のお店を取材した写真などが載っています。

このオリジナルマップは約10年前から配布されているらしく、現在まで何度か改訂し、今配布されているものは、去年作成したものだそうです。

2020年のオリンピックを意識して、新たに日刊スポーツ新聞社も地図に加えたとか。

このマップは、お客様にお店の位置を知ってもらうことと、観光客の方にとってこの地図が記念になることを願って作成されたようです。

それに加え、観光客のみならず、地元の方々に向けた木村家さんからのメッセージも、このマップには込められているとのことでした。

秀司さんはこうおっしゃっています。

「地元の方々にこそ、築地を改めて知ってほしい、つまり、身の回りや日常に関心を持ってほしい、という思いも込めています。1年後に築地市場移転、6年後にオリンピックを控えていますが、地元では意外と、関心を持っていない人が多い。もっと日本人が、意識して自分の身の回りのことに目を向けて、日々努力し、日々感動してほしい。そうすれば、日本全体にも活気が出るのではないでしょうか」

自分の身近なところの、些細な変化に目を向けて生活してほしいという秀司さんの思いが、このマップには込められていたのですね。

少し話題が逸れますが、筆者は数年前からポータブル音楽プレイヤーで音楽を聴きながら街を歩くことをやめました。イヤホンをして街を歩いていると、自分が歩いている土地の風景や、匂いや、音や、雰囲気というものを五感をフルに使って察知することができなくなってしまうと考えたからです。

音楽プレーヤーを捨て、スマホを捨て、街に出よう、歩こう、感じよう。そうすれば、昨日は何も無かったコンクリートの隙間から、花が咲いていることに気づくことができるのではないでしょうか。

続けて、秀司さんは日本の食文化のお話までしてくださいました。

「身の回りに関心を持って日々感動することを人々がせず、無味乾燥な毎日を送っているから、日本の食文化はつまらないものになってしまいました。街を歩けば、全国どこにでもあるようなチェーン店が軒を連ねています。昔は、庶民的で土地に根付いたオリジナリティに溢れるレストランが、たくさんありました。本格的な欧風料理店や英語圏の料理を出すお店は、今はほとんど見かけなくなってしまいました。」

このように話されながら、かつてあった本格派西洋料理店の思い出を、ここに書ききれないほど語ってくださいました。

銀座六丁目・交詢社ビル(建て替え前)にも、ピルゼンという、にしんの美味いドイツ風ビアホールがあったそうです。2001年に惜しまれながら閉店したそう。秀司さんのお話を聞いて、私も行ってみたかったと思いました。

確かに、今新しくできる商業施設は、どれも同じような風貌でオリジナリティがなく味気ないですよね。それに慣れ親しんでしまっている私たちは、本当の食文化の豊かさというものを知らないのかもしれないと思いました。

木村家さんのオリジナルマップから、四代目内田秀司さんが憂いている日本の食文化の現状まで見えてくるとは思いもよりませんでした。

100年以上の歴史をもつ築地木村家さんには、これからも地元の人々から愛されるパン屋さんとして、どうかずっと在り続けてほしいと思います。それは、私たち築地に生きる者が守っていかなければならないということでもあります。

銀座木村屋さんからの認可証(関東大震災以後に再発行されたもの)

銀座木村屋さんからの認可証(関東大震災以後に再発行されたもの)

そのためには、日常や身の回りの些細な変化を、全身で感じて、小さなことにひとつずつ感動しながら生活することが肝要です。

今回の木村家さんへの取材から、そのような大切なことを思い出すことができました。

木村家さん、ありがとうございました。

これからも、美味しいけしあんぱんとカレーパンにお世話になります。

 

*築地木村家ペストリーショップ

<本店>

イートインスペースで買ったパンを食べられます

営業時間

7:00-20:00(平日)、7:00-18:00(土曜)

日・祝定休日(臨時休業あり)

〒104-0045
中央区築地2-10-9

TEL:03-3541-6885

築地駅入舟橋方面出口より徒歩0分

イートインスペースあり。11時〜14時まで、コーヒーのサービスあり。

<場外市場店>

営業時間:8:30-16:30(平日)、7:30-22:00(土曜)

日・祝定休日(臨時休業あり)

〒104-0045東京都中央区築地4-14-1

TEL:03-3546-6235

★この記事を見た方にだけの特別サービス!★

「ふげん社の記事を見た」と店頭で言っていただくと、

500円以上のお買い上げでミニあんぱんが無料でつきます♪

みなさん、ぜひ木村家さんへ!そしてふげん社にもお立ち寄りくださいね^^

木村家さんからふげん社まで、徒歩3分です。

Fumi Sekine
Fumi Sekine プロフィール

ふげん社・ディレクター