私の国第1章 Beatrix Fife “Bix” THE LAND (日本語) 2019.10.15 「そこがあなたの国よ」 17歳のときのことだ。私には今現在、住んでいる国があり、そしてもうひとつ別の国があって、そちらのほうが「私の国」なのだという。 「これからそこで暮らすのよ。そうすれば、その国のこともよくわかるようになるわ。そこがあなたの国なのだから。あなたのお祖父さんとお祖母さんも、そして私もその国の出身なの。だから、当然、あなたもそうよ。あなたの国、そこがあなたのルーツなのよ」 「うん、もちろんそうね」と、私は答える。 その国では一度も暮らしたことはなかったし、よく知らなかったから、少なくとも新しい発見があるに違いないし、そこに住む人たちのことを知ることもできるだろう。 友人たちに、すぐに引っ越すことになると話すと、みんな悲しがった。でも、誰もがもうすでに知っていたことなのだ。それまでに何度もその話をしてきたのだから。学期を終えたらすぐに、みんなで一緒にその国の西海岸を探索することになった。私と一緒に旅行したいと思ってくれたのだ。嬉しかったし、私の人生が何か面白い、新しいものになっていくような気がした。 私はその国の言葉を話すことができる。生まれてからずっと、家の中ではその言葉で話してきたからだ。それにまた、父方の祖父母の国の言語も、親戚たちが使う言語も、学校や友人たちと一緒のときに使う言語も、どれも話すことができた。そしてその言語が、周囲の人々と私を結びつけてくれる。私はそうした言語を愛していて、そしてそのどれをもしっかりとつかまえて離すまいとしていた。まるで狭い吊り橋を歩いて渡るときに、手すりを強く握りしめるように。 それまでも何度も引っ越しをしてきたから、言葉がどれほど重要なものかがよくわかっていたのだ。 期末試験が終わり、友人たちと一緒に「私の国」のいろいろなところを旅する。素晴らしい時間だ。 そして、みんなが帰ってしまうと、私はひとりぼっちになる。 「それでも大丈夫」と、私は思う。 今住んでいる国に来るずっと以前に描いた絵。油彩、クレヨン・紙 27×20 cm 来月に続く